不動点を探して(前編:原始的に考える)
前回のページの蜘蛛の巣図は、初期値から始まってある点に収束していきました。その点に到着すると、\(X_{n+1}=X_{n}\)となりそこから動かなくなります。ここで、関数\(f\)を用いて\(X_{n+1}=f(X_{n})\)と表される関係があるとき、
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\(X=f(X)\)
を満たすような\(X\)を不動点と呼びます。例えば、
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\(X_{n+1}=0.02(100-X_{n})X_{n}\)
という関係があるとき、\(f(X_{n})=0.02(100-X_{n})X_{n}\)として不動点を求めると
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\begin{align*}
X &= f(X) \\
&= 0.02(100-X)X \\
\end{align*}
\begin{align*}
0.02(50-X)X &=0 \\
X &=0, 50
\end{align*}
不動点は\(X=0\)、もしくは\(X=50\)であることが分かります。つまりある\(0\)以上の整数\(N\)を持ってきて\(X_{N}=0\)とすると、\(X_{N+1}=0\)、\(X_{N+2}=0\)、...となり、\(X_{N}=50\)とすると、\(X_{N+1}=50\)、\(X_{N+2}=50\)、...となります。
しかし、\(X_{0}=20\)や\(X_{0}=80\)から始めるとどちらも\(X=50\)に収束してゆきます。
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何故か\(X=0\)には収束しません。調べてみます。
不動点\(X\)から微小量\(\epsilon\)だけズレた点\(X+\epsilon\)はどんな風に変化するか考えてみます。\(X_{N}=X+\epsilon\)とすると
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\begin{align*}
X_{N+1} &= f(X_{N}) \\
&= 0.02(100-X_{N})X_{N} \\
&= 0.02\Bigl(100-(X+\epsilon) \Bigr)(X+\epsilon) \\
&= 0.02(100-X)X+0.02(100-2X)\epsilon -0.02\epsilon^{2}
\end{align*}
ここで\(X\)は不動点なので\(X=0.02(100-X)X\)とすると、
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\(X_{N+1} = X+0.02(100-2X)\epsilon -0.02\epsilon^{2}\)
この\(X_{N+1}\)は\(X_{N}\)と比べてどれくらい不動点\(X\)に近づいた、もしくは遠ざかったのでしょうか。次のように
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(\(X_{N+1}\)と不動点\(X\)との距離)/(\(X_{N}\)と不動点\(X\)との距離)
=\(\dfrac{|X_{N+1}-X|}{|X_{N}-X|}\)
\begin{align*}
\dfrac{|X_{N+1}-X|}{|X_{N}-X|} &=\Biggl|\dfrac{0.02(100-2X)\epsilon -0.02\epsilon^{2}}{\epsilon}\Biggr| \\
&= |0.02(100-2X) -0.02\epsilon|
\end{align*}
\begin{align*}
\dfrac{|X_{N+1}-X|}{|X_{N}-X|} &=|0 -0.02\epsilon| \\
&= 0.02|\epsilon|
\end{align*}
\(\epsilon\)は微小量なので、\(0.02|\epsilon|<1\)とすると、
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\begin{align*}
\dfrac{|X_{N+1}-X|}{|X_{N}-X|} &<1 \\
|X_{N}-X| &> |X_{N+1}-X|
\end{align*}
これは\(X_{N+1}\)が\(X_{N}\)より不動点\(X=50\)との距離が小さいことを意味します。さらに、 \(|X_{N+1}-X| > |X_{N+2}-X|\) 、 \(|X_{N+2}-X| > |X_{N+3}-X|\)、...なので\(n\)の値が大きくなればなるほど\(X_{n}\)は不動点\(X=50\)に近づくことが分かります。
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\(\dfrac{|X_{n+1}-X|}{|X_{n}-X|}= |2 -0.02\epsilon|\)
\(\epsilon\)は微小量なので、\(|2-0.02\epsilon|>1\)とすると、
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\begin{align*}
\dfrac{|X_{N+1}-X|}{|X_{N}-X|} &>1 \\
|X_{N}-X| &< |X_{N+1}-X|
\end{align*}
これは\(X_{N+1}\)が\(X_{N}\)より不動点\(X=0\)との距離が大きいことを意味します。さらに、 \(|X_{N+1}-X| < |X_{N+2}-X|\) 、 \(|X_{N+2}-X| < |X_{N+3}-X|\)、...なので\(n\)の値が大きくなればなるほど\(X_{n}\)は不動点\(X=0\)から遠ざかることが分かります。
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